私たちにとって身近で便利なプラスチックは、生活のさまざまな面で役立っている反面、地球環境を汚染し、人間を含む多くの生き物の健康と生命を脅かしています。国連はプラスチック汚染を、将来に不穏な影を落とす、気候変動に次ぐ脅威だと考えています。
知っておきたいこと
数字で知る
- 人間はこれまでに83 億トンを超えるプラスチックを生成し、そのほとんどが廃棄されてきました。
- プラスチック生産量は、1950年の150万トンから、2020年の時点で3億7,600万トン近くまで拡大しました。これまでに生産されたプラスチックの半分は過去15年間に作られ、そのうち半分以上が環境に捨てられています。
- 2014年時点の報告で、日本は、一人当たりのプラスチック包装ごみの排出量で、アメリカに次ぐ世界第2位の位置につけていました。
- プラスチックの製造と焼却により、2019年だけで18億トン近い温室効果ガスが排出されました。この量は2050年までに3倍以上に増加すると予想されています。
- 科学的には、プラスチックの寿命がどれくらいかの確証はまだ得られていませんが、おそらくは500年におよぶと推定されています。
- これまでに生産されたプラスチックのうち、実際にリサイクルされたのはわずか 9%にしかなりません。
プラスチックにはどんな問題があるの?
環境汚染
- 有害物質を含んでいる
ほとんどのプラスチックは、原油や天然ガスなどの化石燃料を加熱し、有毒化学物質を加えることによって作られています。 - 分解されにくい
プラスチックは自然環境の中では分解されず、バラバラになるだけです。500年以上と推定されているその寿命を通して、環境を汚染し続けます。 - 汚染規模が大きい
プラスチック製品の多くは使い捨て製品として作られており、前述の通り大量に環境中に捨てられています。現在、毎分ごみ収集車一台分のプラスチックが海に流れ込んでいます。
プラスチックは海以外にも、埋立地、川、土壌、空気中など、都市中心部から太平洋ゴミベルトに至るまで事実上あらゆる場所で蓄積され、食べ物や水を通して私たちの体内にも取り込まれています。
健康リスク
- 生産・廃棄工場周囲の汚染
大気と水の汚染は石油化学工場の周囲から始まり、無数の健康上の問題を引き起こします。
この健康被害は、特に低所得国で目立ちます。米国や英国などの高所得国が消費しごみになったプラスチックは、低所得国に輸送されまが、低所得国では廃棄物を管理する設備や技術が不足しているため、多くのプラスチックが捨てられるか燃やされるしかなく、病気や死を引き起こす有毒化学物質が放出されているのです。 - マイクロプラスチック汚染
プラスチックがマイクロプラスチックやナノプラスチックになると、発がん性や神経毒性を持つ有毒化学物質が土壌、水、食料品に浸み出し、野生動物を死に至らしめ、人間の健康を害します。
資源の浪費
プラスチック生産は石油という限られた資源を消費し、しかも世界の石油使用量に占めるその割合は増加傾向にあります。バージンプラスチックに依存した今のような生活は、石油資源が無限でない限り、いずれ破綻します。
廃棄物管理の困難さ
ほとんどのプラスチックはリサイクルできません。リサイクル可能なプラスチックも、現在の技術では使えなくなるまでに2、3 回しかリサイクルできません。結果として、大量のプラスチック廃棄物が埋め立てや焼却で処理されたり、環境中に流れ出したりしています。
マイクロプラスチックって何?
マイクロプラスチックとは、直径が5mm以下の非常に小さなプラスチックの破片で、河川や海洋に流れ込み、広範な環境汚染を引き起こします。
一次マイクロプラスチック
以下のようなさまざまな製品に含まれます
- マイクロビーズ
スクラブ入りの洗顔料や歯磨き粉に多く含まれますが、最近は天然素材で代替している商品も増えてきました。 - マイクロカプセル
柔軟剤や香り付き洗剤で、香りを長続きさせるために使用されています。 - 産業用ペレット
製造業で使用される小さなプラスチックの粒で、衣類や家電製品など幅広い製品に活用されます。
二次マイクロプラスチック
- プラスチック製品の劣化によるもの
ボトルや袋、網などのプラスチック製品が風化して細かくなったもの。 - 衣類の繊維
合成繊維の衣類が、洗濯時や着用中に細かい繊維を放出します。 - 食器洗いスポンジやクロス
アクリル製のスポンジやメラミンスポンジも、マイクロプラスチックの日常的な発生源です。 - 紙コップ
通常はポリ乳酸で内側がコーティングされているため、環境中に流出するとマイクロプラスチックの原因になるとともに、添加剤の化学物質を放出します。 - ペットボトルやティーバッグ
ペットボトル飲料やティーバッグで淹れたお茶には、大量のマイクロプラスチックが含まれます。
マイクロプラスチックの悪影響
- 環境汚染
海や土壌、淡水に浸透し、広範な環境汚染を引き起こします。 - 生態系の混乱
食物連鎖を通じて広がり、全体の生態系に悪影響を及ぼします。これには、マイクロプラスチックを誤食した魚や貝、鳥などが、消化不良や毒素の蓄積に苦しむという物理的な影響のほか、汚染物質による化学的な影響もあります。 - 人間の健康リスク
汚染された海産物を摂取することで、人体にも有害物質が蓄積する可能性がある。また、血管内やさまざまな臓器からもマイクロプラスチックが検出されており、さまざまな健康リスクが懸念されています。
プラスチックごみを減らすためには何ができるの?
再利用可能な製品を使用する
ペットボトルの代わりにマイボトル、プラスチック袋の代わりに布製のエコバッグを使うなど、再利用できるアイテムを使います。再利用によって環境負荷を下げるには、一定の回数を使う必要がある点に注意します(コットン製のトートバッグなら131回、マイボトルは10~20回)
使い捨てプラスチックを避ける
ストローやカトラリーなどの使い捨てプラスチックを避けること、プラスチック包装された商品やプラスチック製の商品(特に使い捨てプラスチック)をなるべく買わないことを心がけます。
プラスチック包装を減らすためには、量り売りや裸売りをしているお店や、リユース容器を提供しているお店でのお買い物も有効です。
リサイクルを徹底する
各自治体のホームページなどで分別について確認し、リサイクルできるものは資源ごみに分別します。また、民間のさまざまなリサイクルプログラムに参加するのも有益です。使用済みのプラスチック収納やボトル、合成繊維を含む衣類なども、店舗での回収プログラムを積極的に活用して資源化することで、ごみだけでなく、バージンプラスチックの使用量も減らすことができます。
周りの人や地域に働きかける
自分自身のプラスチック消費量を減らすことは前向きな一歩ですが、友人、家族、その他のコミュニティと協力すると、効果はさらに大きくなります。
たとえば、ごみ捨て場の管理を徹底する。仲間とごみ拾いをする(プロギングやビーチの清掃活動、ダイビング仲間と水中のプラスチックを拾うのもオススメ)。地元や学校などのイベントで、使い捨てプラスチックの使用をやめるよう働きかける。屋外で使用するプラスチックについて、プラ以外でできた製品の使用を提案するなどの方法があります。
グリーンウォッシュに気を付ける
環境に配慮しているように見せかけているだけで、実態はそうではないことを、「グリーンウォッシュ」(「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語)といいます。身の回りの商品や広告がグリーンウォッシュでないか、実例を知って見分ける目を育てます。曖昧で意味が広すぎる表現や、持続可能性に関する主張の根拠が欠けている場合などは要注意です。
社会全体で変えていきたいことは?
思い込みを手放す
「使い捨ては衛生的」「厳重にパッケージされているほど安全」「包装が立派なほど品質も高い」
こんなイメージはないですか? ですが、その多くは思い込みです。ぜひ一度、目の前のプラスチックが本当に必要か考え直してみてください。そして不要だと判断した場合には勇気を持って、生産者も小売店も消費者も、お互いにそのことを伝えあってください。
ペットボトルへの依存から抜け出す
グリーンピースも参加する国際的な脱プラスチックネットワーク「Break Free from Plastic(BFFP)」の2024年の発表では、日本を含む41カ国の海岸や河川でプラスチックごみを回収したところ、最も多くの国で見つかったブランドは米飲料大手ザ・コカコーラ・カンパニーで、6年連続のワースト1位となりました。計3万3820個回収された同社のプラごみのうち、最も多かったのはプラスチックボトルです。このような現状を変えるには、使い捨てペットボトルからリユースできる容器への転換を図ること。水などは、給水機で販売するシステムに切り替えるといった取り組みが必要です。
マテリアルリサイクルを推進する
日本での廃プラスチック有効利用率は8割を超えると言われていますが、その内訳はサーマルリサイクル(焼却に伴う熱回収)が6割を占めており、マテリアルリサイクル(プラスチック製品へのリサイクル)は2割程度です。バージンプラスチックからの脱却には、マテリアルリサイクルの推進が不可欠であり、そのためには、市民による分別の徹底やリサイクル技術の向上はもちろんのこと、企業が、分別やリサイクルがよりしやすい製品づくりに取り組むことも重要です。
もっと知る
書籍
『プラスチック汚染とは何か』枝廣淳子/岩波ブックレット
『海洋プラスチック汚染』中嶋亮太/岩波科学ライブラリー
『プラスチックフリー生活』シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ/NHK出版
『ゼロ・ウェイスト・ホームーごみを出さないシンプルな暮らし』ベア・ジョンソン/アノニマ・スタジオ
『暮らしの図鑑 エコな毎日 プラスチックを減らすアイデア75×基礎知識×環境にやさしいモノ選びと暮らし方』中嶋亮太、古賀陽子/翔泳社
日本語サイト
国際連合広報センター やめよう、プラスチック汚染
環境省:Plastic Smart
日本野鳥の会 海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
プラスチック循環利用協会 プラスチックのはてな
プラスチック循環利用協会 パンフレット一覧
アノニマスタジオ ゼロ・ウェイスト・ホームへの道
プラなし生活
サステイナブルに暮らしたい
英語サイト
国連開発計画(UNDP):なぜ私たちはプラスチックをもっとリサイクルしないのか(Why aren’t we recycling more plastic? )
国連 画像:プラスチックは永遠に
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以下は、プラスチック問題を克服するための取り組みです。似たような事例、まったく違う独自の取り組みなどをご存知の方は、是非コメント欄に投稿お願いします! 動画や本などのおすすめ情報も大歓迎です。
※ 特に参考になる書き込みは、後ほどコンテンツ内に反映させていただくことがあります。あらかじめご承知おきください。
解決策リスト
「私」にできること
プラスチックごみの出ない買い物や暮らし方を楽しみます。
- プラなし生活:プラスチックに頼らない生活をはじめるための身近なアクションを紹介
商品選びで脱プラ
- Two Trees、S.:使い捨てプラスチックの代わりとなる様々な商品を紹介
- Nhes.、MEGURU:竹素材の歯ブラシ
- 貝印の紙製カミソリ:ハンドルに紙を使用しており、やむを得ず使い捨てのカミソリを使う場合に便利
お買い物の仕方で脱プラ
生鮮食品を含む食料品、日用品などが包装なしで販売されており、量り売りが可能なスーパーマーケット。
京都本店、CIRTY BIOSK by Totoya(代官山)などの直営店はもちろん、オンラインストアも展開しています。
マイボトルで脱プラ
- mymizu:は、世界中20万箇所のカフェや公共施設など、無料で給水できる場所を紹介
- Refill Japan:全国に給水スポットを広げる活動や、給水スポットをまとめたマップの公開を実施
- 無印良品:お客さんが自由に使える給水機を一部店舗に設置しており、専用アプリや公式サイトから対応店舗を検索することが可能
出てしまったプラスチックはリサイクルします。
ペットボトルの回収ボックスには、ペットボトルのみを正しく分別して入れます。他のごみを入れることは、ごみがあふれて環境を汚染する原因になるため、絶対に避けるべきです。
Loft GREEN PROJECT
リユースとリサイクルを推進するテラサイクルは、ロフト店頭で取り扱いのある複数のブランドの使用済み空き容器(プラスチック製、アルミ製、ガラス製)を回収・リサイクルするプロジェクトをはじめとした、様々なリサイクルを行なっています。
- 株式会社シード:使い捨てコンタクトレンズの空ケースをリサイクルするプログラムを通じて、海洋プラスチックごみに対応
- HOYA株式会社アイケアカンパニー、クーパービジョン・ジャパン株式会社:使い捨てコンタクトレンズの空ケースの回収・リサイクルを実施
- 第一三共ヘルスケア:2022年10月から神奈川県で使用済みのPTPシート(おくすりシート)を回収・リサイクルする実証実験を開始
どんな製品がマイクロプラスチックを生み出しているかを知り、別の製品への置き換えを検討します。
- 柔軟剤や香り付き洗剤、マイクロビーズ入りのスクラブ洗顔料や歯磨き粉を購入する際には、無香料のものや、プラスチック材料を天然素材に置き換えている商品を選びます。
- 衣服を購入する際はなるべく天然素材のものを選びます。
- やむを得ず化学繊維の商品を着ることになった場合は、マイクロプラスチックをキャッチする洗濯ネットに入れて洗濯します。グッピーフレンドは、90%以上の繊維がバッグ内に保持され、排水に流出しないという試験結果が出ています。
- 食器洗いには、セルローススポンジ、へちまたわし、麻たわし、びわこふきんなどを使用します。
- 屋外で使用するプラスチック(洗濯ばさみ、ごみ箱など)の放置を避け、可能な限りプラスチック以外でできた製品を選択します。
生活の場から出るプラスチックごみを減らすために、周囲の人と協力します。
リユース容器を活用する
全国のお祭りやイベントに向けたごみの減量相談・提案や、リユース食器のレンタル・洗浄サービスを提供しています。
- スペースふう:Jリーグのチームと協力してリユース容器を普及
- Megloo:F1レース会場やフェスイベント、一般飲食店のテイクアウトやWoltのデリバリーフードなどでリユース容器を展開
- Re&Go:カフェをメインにリユース容器を展開
脱プラ製品を選ぶ
- SHIFTON:和紙からできた人工芝やゴールネットを製造、販売する紙総合商社
ごみ拾いをする
- さらに進んだ活動をするのなら、オランダのポイ捨て防止団体 Litterati がマクドナルドにごみを減らすよう圧力をかけた時のように、汚染状況を文書化するのも重要です。
- グリーンバード:様々な地域でごみ拾い活動を展開しており、オープンにボランティアを募集
- ピリカ:SNSを通してごみ拾い記録・発信したり、ユーザー同士がコメントやイベント参加でつながることができる、ごみ拾い促進プラットフォーム
それぞれの立場でできること
プラスチック業界への無条件融資をやめます。
銀行と投資家は、自分たちの出資がプラスチック廃棄につながっていないか調べて、開示する必要があります。プラスチック汚染をしている事業者に融資する場合は、プラスチックの削減に向けて最大限努力していることを条件とします。そして最終的には、バージンプラスチック生産者への投資から撤退すべきです。
公共スペースでのプラスチックの削減とリサイクルを奨励します。
例えば給水所の設置は、プラスチックごみを減らすことのできる効果的な一歩です。
- 鎌倉:市役所本庁舎では、マイカップに対応した自動販売機を設置しています。
- パリ:市内全域に無料の給水ステーションを 1,000 か所以上設置。人通りの多い場所には、リユースボトルの自動販売機も設置しています。これは、他の何百もの都市と協力して、民間企業から水利権を取り戻したことで達成されました。
廃棄物ゼロの都市を目指します。
ゼロ・ウェイスト・シティは、廃棄物を完全に廃止する段階的なシステムを作り上げ、実践しています。環境保護団体ガイアの「ごみゼロマスタープラン」が参考になります。
- 徳島県上勝町は、2000年に旧式焼却炉を閉鎖しなければいけなくなりました。このため住民は、ごみを45品目に分別し、再利用できるものが人から人へ渡るようにすることで、ごみを大幅に減らしました。現在、日本の全国的なリサイクル率は約 20%ですが、上勝町では廃棄物の 81%がリサイクルされています。
- イタリアのカパンノリという町は、ごみへの罰金や、包装削減した小売業者への税制優遇措置、自治体運営の再利用センターなどを導入しました。
自治体の枠を超えて、包括的な海洋ごみ対策プロジェクトを立ち上げます。
- 瀬戸内オーシャンズX:瀬戸内海に面する岡山県、広島県、香川県、愛媛県の4県と日本財団が連携協定し、共同で推進しているプロジェクト。瀬戸内海への新たなごみの流入を2025年までに70%減らし、回収量を10%以上増やすことを目標に、調査研究や企業との連携、市民への啓発、教育と政策形成を行っている。
マイクロプラスチックから人々を守ります。
- 自治体の飲料水にマイクロプラスチックが含まれていないか検査し、必要な場合は浄水処理を改善します。
- タイヤの摩耗粒子は水路に流入するマイクロプラスチックの最大の発生源のひとつと考えられているため、月に 2 回道路の清掃を実施します。
- 処理下水に含まれるマイクロプラスチックを調べるとともに、処理をより良いものにして減らします。
プラスチックごみの発生を防ぐ方法や、プラスチックを回収、再利用する方法を探ります。
- スズキ:走行するだけで水面付近のマイクロプラスチックを回収できる、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置を開発
- Breaking the Plastic Wave:世界初のモデリングを用いたグローバルな分析で、既存の解決策や技術の適用が、今後 20 年間での年間海洋プラスチック流出量の約 80%もの 削減を可能にするとわかりました。しかし、残りの 20% を削減するためには、新たな技術革新が必要です。
膨大なプラスチックごみを生み出している、いまのスポーツイベントのあり方を見直します。
国際オリンピック委員会(IOC)と国連環境計画(UNEP)が共同で発表した公式ガイド「プラスチック作戦計画」は、プラスチック汚染の現状と取るべきアクションを教えてくれます。以下は、紹介されているアクションの例です。
- どうしてもプラスチックを使用する場合は、確実にリサイクルされるよう、適切な場所に分別回収箱を設置する。
- 会場でのペットボトル販売を中止し、給水ポイントを設置したりマイボトル携帯を呼びかけることで、ペットボトルごみを削減する。
- プラスチックストローを廃止する。
- 個包装のケチャップやソース類は配布せず、ディスペンサーを用意する。
- リユースカップ・食器や、堆肥化可能な食器でドリンクやフードを提供する。
あなたのアートで人々に行動を促します。
- テス・フェリックス:米国のアーティスト。「オーシャン・ヒーロー」シリーズは、海洋学者のシルビア・アールからローマ法王フランシスコに至るまで、海洋浄化に取り組む活動家や指導者らの古典的な肖像画をプラスチックの破片を使って制作したもの。
- ベンジャミン・フォン・ウォン:カナダの彫刻家。プラスチックごみが流れ出す、3 階建ての高さにもなる巨大な蛇口をつくった。作品には #TurnOffThePlasticTap(プラスチックの蛇口を閉めろ)というメッセージが込められており、プロジェクトの Web サイトは、訪問者が行動を起こすためのハブとして機能しています。
- アレハンドロ・デュラン:メキシコシティのアーティスト。メキシコ最大の連邦保護自然保護区のひとつ、シアン・カアノネの海岸に打ち上げられたプラスチックゴミからカラフルなモザイクを制作。プロジェクトの過程を通じて、プラスチックごみが6 大陸の 58 の国と地域からのものであると特定した。
プラスチックフットプリントを特定、開示、追跡します。
企業には、プラスチックフットプリント(=事業の過程で使ったり捨てたりしたプラスチックの総量)について明確な目標を定め、定期的な報告を行うことが求められています。
- プラスチックフットプリントの追跡と削減には、市場シェアの拡大、より良い資金調達の可能性など、様々なメリットがあります。
- サーキュリティクス:エレン・マッカーサー財団のサーキュラリティ測定ツール。プラスチックごみを追跡するだけでなく、それらを資源として循環させる事業設計を企業がどの程度行えているか、測定する。
- BASF:ドイツに本社を構える総合科学会社。自社の全製品のカーボンフットプリントを公開している。
製品や製造過程からプラスチックを排除します。
既存の製品を再設計や、新製品の作成において、バージンプラスチックを排除します。プラスチックに似た機能が必要な場合には、代替材料やリサイクルプラスチックを使用します。
- バイオマスレジンホールディングス:ライスレジン(コメを原料にしたバイオマスレジン)で、玩具やスプーン、歯ブラシ、プラスチック袋といった製品づくりを行う
- レンゴー株式会社:ビスコパール(パルプが原料で、海水中の微生物によって水と炭酸ガスに分解される、マイクロビーズの代替材料)を開発
- AmicaTerra:セルロース、澱粉、植物由来の天然樹脂、水を原料とした、自然環境下で生分解可能な代替素材「modo-cell」による商品開発を行っている
- 株式会社カネカ:海水中でも生分解される、100%バイオマス由来の生分解性バイオポリマー(PHBH)Green Planet®を開発
- サントリー:2022年、国内商品の46%をリサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用したペットボトルに切り替え。リサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の新規使用を2030年までにゼロにすることが目標。
- 日本コカ・コーラ株式会社、セブン&アイ・ホールディングス:2019年に共同で、セブンイレブンに設置したペットボトル回収機で回収した使用済みペットボトルのみで作った、完全循環型ペットボトルでの企画商品を販売した。コカ・コーラは、2030年までにペットボトルにおける化石由来材料の新規使用をゼロにするというロードマップを掲げている。
消費者がプラスチックなしの新しい日常を受け入れられるよう手助けします。
- やむをえず使い捨て容器を使う場合は、プラスチックより環境負荷の低いものを採用してください。THE GOOD CUPというドリンク用カップは、サトウキビ廃棄物などの再生可能資源を原料とし、プラスチックを全く使うことなく耐水性を持たせています。
- 商品は簡易包装にします。小売店は過剰包装やめます。また、レジで商品をポリ袋提供の必要性を感じた場合も、買い手の希望を確認するようにしてください。そうした店側のサービスを、半分以上の消費者が過剰だと感じていることが、環境省の2018年の調査でわかっています。
- 容器持参での買い物を奨励します。量り売りや裸売りなど、持参容器で買い物ができるコーナーを設けてください。日本コカ・コーラは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内でマイボトルに対応した自動販売機の実証実験を行っており、2025年を目処に500台程度を設置する方針としています。
メーカーは、リユース容器での商品販売に参加してください。
Loopは、さまざまな日用品や食品をリユース容器で販売し、使用済みの容器を回収・洗浄するシステムを確立しています。
飲食店は、デポジット容器でのテイクアウトを検討してください。
政治・法律 Governance
世界規模でのシステム変革を目指します。
過去 20 年間、世界中のプラスチック政策を振り返ると、プラスチック規制は明らかに厳しくなっています。しかし今のままの取り組みでは、海洋プラスチックごみは2040 年までに 7% しか削減できません。既存の取り組みは連携が取れていないからです。世界が協力して、包括的で協調的な対策を早急に取る必要があります。
- 国連の拘束力のある世界条約を支持し、履行します。2022年春の国連環境総会で173カ国の指導者が策定に同意した法的拘束力のある世界的条約に対し、100カ国以上が支持声明を発表しました。国連は、2025年までにプラスチックの生産・廃棄方法の改革について法的拘束力のある条約を策定するとしています。(プラスチック条約の詳細を反映)
民間の責任に言及してください。
プラスチック汚染をなくすには、プラスチックのライフサイクルの全段階に介入することが必要です。新しいプラスチックの生産を止めることは、合理的な最初のステップであると認識しています。プラスチックの生産を縮小し、再利用できるように製品を設計することで、使い捨てプラスチック製品が環境中へ流出するのを大本から防ぐことができます。
- 2024年6月、日本政府は、再生材使用量の目標値や使用実績の報告を義務化する方針を固めました。この改正により、資源有効利用促進法が実効性の高いものとなることが望まれます。
- 廃棄物処理の責任を生産者に課します。日本では、すでに容器リサイクル法というかたちで拡大生産者責任(EPR)法が導入されており、生産者は、行政が収集した廃プラスチックをリサイクルする際の費用を負担しています。しかし、容器リサイクル法の導入で廃プラスチックの回収量やリサイクル量は増えたものの、プラスチック包装の生産抑制や、リサイクルを念頭に置いた製品設計にはつながっていません。一定以上の規模のメーカーには自社包装ごみの回収とリサイクルを義務付けるなど、何らかの新しい工夫が求められます。
- プラスチックの禁止において公平性を優先します。プラスチック規制が、生産業や小売業の下流にいる人々に不当に大きな影響を与えるものになってはいけません。プラスチック政策において様々な人々を尊重するために、アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)が掲げる 10 原則を参照してください。
廃棄物管理システムを改善します。
政府は、すでに都市環境や自然環境を汚染しているプラスチックの管理をサポートする必要があります。以下のポリシーが鍵となります。
- ウェイストピッカーの存在を認識します。ウェイストピッカー(他人が捨てた物質を収集、分別、リサイクル、販売する非公式労働者)の役割は過小評価されています。WIEGO(インフォーマル部門の女性に対する国際組織)の作成したガイドでは、こうした見落とされがちなグループを認識するためにすでに動いている国々についての、法的背景と事例研究を提供しています。
- 海洋プラスチック汚染を阻止し、海を浄化します。毎年50万トンから100万トンの商業用漁具が海で失われており、海洋における最大のプラスチック汚染源となっています。世界自然保護基金(WWF)のレポートは、問題点と政策解決策の両方を包括的に考察しています。
参考: Plastics
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