「パリ協定」という言葉をニュースなどで耳にしたことがある人は多いと思います。これは、2015年12月にフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の会議で採択された、地球温暖化を抑えるための国際的な約束です。
外務省のホームページには、日本語の概要(PDF)や英語の原文(PDF)も公開されていますが、実際に読んだことがある人は少ないかもしれません。そこで今回は、パリ協定の内容を、簡単な要約を交えて分かりやすくご紹介します。
前文
パリ協定の前文は、気候変動がもたらす影響について述べています。気候変動は自然環境だけでなく、人々の暮らしや社会全体に深刻な影響を及ぼす問題です。その中で、特に重要とされている視点は以下の通りです。
- 人権の保護
気候変動対策は、すべての人の権利を尊重するものであるべきです。特に、先住民族や移民、子ども、障がい者、貧困層といった影響を受けやすい人々への配慮が求められています。 - ジェンダー平等の推進
女性が気候変動対策において中心的な役割を果たせるよう、支援が必要です。 - 健康や生態系への配慮
気候変動が人間の健康や自然環境に与える悪影響を最小限に抑えることが強調されています。
さらに、科学的な知見に基づいて、世界中の国々が協力し、特に発展途上国や小さな島国に対する技術支援や資金支援を強化する必要性が述べられています。これらを通じて、未来の世代のために持続可能な社会を築くことを目指しています。
本文:26の条項
パリ協定の本文は26条から構成され、それぞれが具体的な目標や実施方法を定めています。以下に主要な内容を簡単にまとめます。
Article 1: 用語の定義
協定で使われる重要な用語を明確にしています。
- 温室効果ガス(GHG):地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)など。
- 適応:気候変動の影響を抑えるための行動や計画。
- 排出削減:温室効果ガスを減らす取り組み。
- 国が決定する貢献(NDC):各国が自主的に設定する温室効果ガス削減目標。
Article 2: 目的
- 地球の気温上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に抑える。
- さらに可能なら、1.5℃未満を目指す。
- 持続可能な社会と経済の実現を促進する。
Article 3~5: 削減目標と自然保護
- 各国は、自国の削減目標(NDC)を設定し、5年ごとに見直して目標を引き上げます。
- 世界全体で温室効果ガスの排出を削減し、今世紀後半には実質ゼロ(ネットゼロ)を目指します。
- 森林の保護や再生を重視し、気候変動対策における重要な役割を果たします。
Article 6~9: 国際協力と資金支援
- 各国が技術や資金を共有し、協力して目標達成を目指します。
- 先進国は途上国に年間1000億ドルの支援を提供し、適応策や脱炭素化を後押しします。
Article 10~12: 技術、能力、意識向上
- 気候変動に対応するための新しい技術を開発・普及します。
- 途上国の能力開発を支援し、教育やトレーニングを通じて対応力を高めます。
- 国民全体が気候変動問題を理解し、行動できるように啓発活動を推進します。
Article 13~15: 透明性と進捗評価
- 各国は進捗状況を定期的に報告し、国際的に検証されます。
- グローバルストックテイク(5年ごとに世界全体の進捗を評価)を実施し、次の行動計画に反映します。
- 各国が協定を守れるよう技術や資金のサポートを提供します。
Article 16~26: 協定の運営と手続き
- 締約国会議(COP)が協定の進捗を監督し、新しいルールや計画を議論します。
- 必要に応じて協定を改訂したり、紛争を解決する仕組みを整えています。
- パリ協定への加盟や脱退、手続きの詳細も明確に定められています。
パリ協定の意義
パリ協定は、地球温暖化を抑えるための国際的な約束であり、以下の特徴があります
- 気温上昇を2℃未満、理想は1.5℃未満に抑える。
- 各国が自主的に目標を設定し、進捗を見直しながら努力を続ける。
- 途上国を支援する資金や技術が明確に定められている。
- 気候変動が社会や人々に与える影響に配慮し、ジェンダー平等や人権の尊重といった課題も重視している。
パリ協定は、気候変動対策だけでなく、持続可能な社会の実現を目指すための国際的な枠組みです。この協定が目指すところを知っておくと、ニュースなどで日本の温暖化対策やCOPについて見聞きしたとき、その内容をより深く理解できるのではないでしょうか。
ぜひ、今後にお役立てください。