気候変動の原因の 3 割は、私たちの食に関係しています。80 億人を超える食糧を、環境を再生しながらまかなうのが環境再生型農業です。
環境再生型農業は、自然の力を生かして土壌を回復させ、健康な食べ物を育てます。生態系や水環境を守り、地域の文化を守ることにもつながります。
※ 茶色は海外サイトへのリンクです。
知っておきたいこと
環境再生型農業ってどんなもの?

― 茨城県石岡市「不耕起栽培・あらきファーム&ガーデン」
環境再生型農業は、土壌・水・里山など、農業に関わる生態系を回復させ、生物多様性を守りながら健康な食料を育てる農業。自然のしくみを活かして土に炭素を蓄え、土地の健康を取り戻します。
この農法を、世界の農地や草地の4分の1で実践すれば、30年間で550億トンの温室効果ガスを吸収・貯留できる可能性があります。従来の工業型農業が土壌劣化や炭素の放出を招いてきたのに対して、環境再生型農業は土を豊かにし、気候変動の緩和と持続可能な食料生産につながります。
有機農業との違い
有機農業は、化学合成された肥料や農薬を使わない、遺伝子組み換え技術に依存しないなど、環境への負荷をできるだけ抑えた農業で、日本では農林水産省が定める有機JAS規格に基づいて管理されています。
一方の環境再生型農業は、特定のルールよりも、農業の結果として土壌や生態系の健全性が回復・向上していくことを重視しています。
これらの農法は、組み合わせて実践することも可能です。
カバークロップ(被覆作物)を利用する
畑を植物で覆うと、土壌を侵食から守ると同時に、栄養となる有機物を与えることができます。冬から春にかけての水田がレンゲや菜の花に覆われているのを見たことがある人もいるかもしれません。土壌の健康を支えるこれらのカバークロップについて、近年ではさまざまな研究や利用が進んでいます。
堆肥を活用する
不耕起栽培を行う
土壌を耕すのを控えることで、土壌の構造を保ち、そこに棲む微生物や動物の活動を促します。不耕起栽培では、土壌の中の炭素や微生物の量が増えます。これは、菌根菌などの微生物と植物の根のネットワークの構築や維持を助けることで、植物の生育促進につながります。
作物を多様化する
異なる作物を混植することで、微生物や昆虫、鳥などを含む多様な生態系を作り出し、病害虫を抑制したり、栄養循環を改善することができます。
森林農法(アグロフォレストリー)

捨てられるものが、土を育てる場所になる。
アグロフォレストリーは、フードフォレスト(food forest)や食べられる森とも呼ばれます。木や低木と、果樹などの作物を一緒に栽培することで、多層的な生態系を作り出し、土壌保全や生物多様性の向上を図ります(詳しくは「森林農法」のページを参照)。
無農薬・無化学肥料を実践する
化学肥料や農薬の使用を抑え、有機肥料や生物農薬(いわゆる「害虫」の天敵となる昆虫)を利用することで、環境への負荷を減らします。
家畜と持続可能に関わる
家畜はほぼすべての環境再生型農業にとって、作物生産の助けになる重要なパートナーです。家畜を自然の牧草地で飼育し、放牧地をローテーションしていくことで、適度に土が耕され、排泄物によって土壌は豊かになります(詳しくは「有畜農業」のページを参照)。
パーマカルチャーの実践
パーマカルチャーとは、永続可能な農業を軸とした暮らし方や考え方のこと。自然の仕組みを最大限に活用した生き方です。

環境再生型農業はなぜ必要なの?
土壌を健康的にするため
従来の農業では、除草剤や殺虫剤などの合成化学物質によって、土の中の微生物や小さな生き物が減り、栄養の循環や生態系のバランスが崩れやすくなります。また、耕しすぎにより土の粒のまとまり(団粒構造)が壊れ、乾燥や雨風の影響を受けやすくなり、表土の流出や土壌侵食が起こります。
環境再生型農業は、土壌中の有機物を増やし、保水力を高め、微生物や微小動物が活発に働ける環境をつくることで、土壌本来の健康を回復させ、侵食を防ぎます。
農地からの温室効果ガス排出量を減らし、吸収量を増やすため
人類が排出するCO₂の3分の1以上は、工業型農業(単一の作物を広い面積で栽培すること)が原因です。また、手つかずの土地を単一作物の農地に変えようとすると、多くの場合、森林伐採や土地の開墾、家畜の過放牧により、温室効果ガスを吸収し保持する場を大きく損ないます。環境再生型農業は、土壌に有機物を蓄積し、炭素を固定することで、温室効果ガスの削減に貢献します。
生物多様性を保護するため
従来の農業に一般的な単一栽培(モノカルチャー)は、生物多様性を減少させ、害虫や病気に対する抵抗力を弱めます。環境再生型農業では、多様な作物を栽培したり、カバークロップや森林農法を導入することで、生態系の多様性を維持し、病害虫に対する天然の防御力を高めます。
水資源の利用を持続可能にするため
従来の農業は大量の水を必要とし、水資源の枯渇を引き起こすことがあります。環境再生型農業は土壌の保水力を高め、効率的な灌漑技術や雨水を活用することで、水資源の利用を持続可能なものにします。
化学肥料と農薬を削減するため
化学肥料と農薬の使用は、土壌や水質汚染、生態系への悪影響の原因になります。環境再生型農業は、天然の肥料や害虫の天敵を利用し、化学物質の使用を抑えることで、環境への負荷を軽減します。
食糧生産を持続可能かつ健康なものにするため
従来の農業は長期的に見ると、土壌の劣化などにより生産性が低下したり、栽培が不可能になるリスクがあります。環境再生型農業は土壌の健康を維持し、長期的に安定した食料供給を実現します。
担い手の経済を活性化するため
環境再生型農業は、化学肥料や農薬に依存しないため、農業経費の削減を可能にします。地域に根ざした持続可能な農業は、地域経済の活性化と農家の収入向上につながります。日本では昔から、家の周辺には日々の野菜を育てる小さな菜園があり、季節の野菜や柿、梅などを植えていました。
社会的および文化的価値の保護
現代社会では、伝統的な農業知識や文化が失われてきています。環境再生型農業は、伝統的な知識や技術を尊重し、それらを現代の持続可能な農業の実践に取り入れます。
もっと知る
書籍
『農業聖典』アルバート・ハワード/日本有機農業研究会
『土を育てる: 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン/NHK出版
『環境再生型(リジェネラティブ)農業の未来』ウィル・ハリス/山と渓谷社
『地球再生型生活記』四井真治/アノニマ・スタジオ
『パーマカルチャー菜園入門』設楽清和/家の光協会
『みんなの地球カタログ』福岡梓/トゥーヴァージンズ
『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』ソーヤー海/エムエム・ブックス
映画
映画『君の根は』
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以下は、環境再生型農業を普及させるための取り組みです。似たような事例、まったく違う独自の取り組みなどをご存知の方は、是非コメント欄に投稿お願いします! 動画や本などのおすすめ情報も大歓迎です。
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解決策リスト
「私」にできること
環境再生型農業が土壌の健康を改善し、炭素を隔離し、食品を再び健康にするための鍵となる理由を学びます。
工業社会による環境再生型農業の再発見は、インドの伝統的な農場を研究し、「土壌、植物、動物、人間の健康は一体であり、分離できない」と観察したサー・アルバート・ハワードの研究から始まりました。今日、環境再生型農業は、健康的な食品を生産し、環境のダメージを修復する持続可能な方法と見なされています。
現代の環境再生型農業は、先住民族の伝統的な食習慣に基づいていることを知ります。
食料は、工業型農業が台頭するずっと前から、有機的かつ再生的に生産されていました。
日本では古くから、庭先に小さな畑をつくり、様々な品種の日々の野菜や果樹を育て、柿や梅、茶などを植える暮らしが営まれてきました。また、森と畑を融合させ、人が適度に手入れする里山を育むことで、そこに暮らす昆虫や鳥類の生活環境を守ってきました。
自分たちが暮らす地域の環境と、小さな農の実践を先人から知ることは、持続的な社会の形成に役立ちます。
見学や参加、学び、小さく始めてみます。

パーマカルチャーの実践は、都会でも、小さな庭でも始めることができます。以下では、常時参加したり学ぶ機会を提供しています。
- 東京アーバンパーマカルチャー:都市でのパーマカルチャー実践を学べるワークショップを開催。
- パーマカルチャーデザインラボ:デザイン的視点からパーマカルチャーを学べる講座・体験プログラムを提供。
- パーマカルチャーセンタージャパン:日本最古のパーマカルチャー拠点。千葉県にある里山を舞台に実践の場を提供し、全国で講座やイベントを開催。
- ソイルデザイン:『地球再生型生活記』著者の四井真治が著書中の長年の生活実験で得られた気づきである「いのちの仕組み」に基づいた活動。商業施設のデザイン実績多数が有り社会実装を進める。「地球再生型生活カレッジ(オンライン講座)を開講している。環境省アンバサダー。
- エディブルスクールヤードジャパン(学校に食べられる森をつくる):学校の校庭を食べられる庭にするプロジェクト。教育を通じて環境再生型農業を次世代に伝える。
- 愛知アーバンパーマカルチャー:街の暮らしでもパーマカルチャーに触れる様々なイベントを開催。
- たねのがっこう:自然栽培・自給自足などが学べる学校型プログラム。
- ブラウンズフィールド:千葉県いすみ市を拠点に、農や食に関するイベント・宿泊・体験を多数提供。
- 日本不耕起栽培普及会(千葉・埼玉):不耕起栽培の普及活動を展開。圃場見学や研修を実施。
- メノビレッジ(大地くらし研究所):北海道長沼町を拠点に、定期的な農業講座・ワークショップを開催。
- 日本でパーマカルチャーを学べるところ(PCCJ一覧):全国のパーマカルチャー実践・学習拠点を網羅したリスト。
- NPO法人ふるさとファーマーズ(神奈川県茅ヶ崎市):不耕起栽培による環境再生型農業を実践しながら、学校授業や親子体験、企業・行政との共創を通じて、人と自然、人と地域のつながりを育む活動を展開。
勉強会を開催したり、映画を上映します。
環境再生型農業をテーマにした上映会や勉強会を地域で開くことは、身近な人とこのテーマを共有する入口になります。映画『君の根は』は、上映会キットも提供されており、自主上映会を開きやすい作品です。
環境再生型農業によって生産された食品やその他の品物を購入します。
- 八雲山水自然農園(北海道八雲町):自然農法で育てた野菜・加工品を販売。
- 不耕起栽培・あらきファーム&ガーデン(茨城県石岡市):不耕起栽培を実践する農家。農産物の宅配・販売。
- フィールズ・フィールズ(千葉県佐倉市):有機・自然農を実践。野菜セットの宅配あり。
- はちいち農園(神奈川県茅ヶ崎市)環境再生型コミュニティ農園を運営。不耕起栽培による大豆を活用したアイスクリームブランド「SOYSCREAM!!!」を展開し、消費を通じた土壌再生の仕組みづくりに取り組んでいる。
- SHO Farm(神奈川県横須賀市):自然農・不耕起栽培を実践。
- AINA FARM(三重県亀山市):自然農・パーマカルチャーを実践。
- 阿波ツクヨミファーム(徳島県阿波市):月の農業暦に基づく自然農法を実践。
- SATOYAMER Regenerative Tea:里山の知恵と植物の力を活かし、環境再生型農業を実践する生産者のもとで育てられた素材だけを使った日本のブレンドティー。飲むことで大地を再生する農業と生産者を応援できる。「いただきます」という言葉に込められた感謝の心を、一杯のお茶を通じて日常に取り戻す試み。
それぞれの立場でできること
環境再生型農業の実践について調べ、自分の農場や牧場で導入できるか考えてみます。
- 環境再生農業の入門書としては、ゲイブ・ブラウンの著書『土を育てる: 自然をよみがえらせる土壌革命』や『環境再生型(リジェネラティブ)農業の未来』があります(詳しくは「農業生態学」「森林農法」のページを参照)。実践方法としては以下のものがあります。
- 有機不耕起栽培:無農薬農業と不耕起農業を組み合わせたもので、多くの場合カバークロップを使用。
- カバークロップ:土壌を保護し、有機物を増やすために、さまざまな植物を使って地面を覆う。
- 複合栽培と食べられる森:自然の生態系を模し、2種類以上の食物を一緒に栽培。多層の食用作物の木々を活用。
- 森林農法(アグロフォレストリー):樹木や低木を、作物や動物の飼育と組み合わせる(「森林農法」のページを参照)。
- 堆肥化:木材、肥料、食品廃棄物などを好気的に分解した堆肥を作り土壌を豊かにする(「堆肥」のページを参照)。
- 林間放牧:同じ土地で樹木と家畜の放牧を組み合わせる(「林間放牧」のページを参照)。
- 多年生作物:果物やナッツ類など、種をまかずに毎年生育する樹木や野菜(「多年生作物」を参照)。
- バイオ炭:土壌の肥沃度を高め、保水するために使う炭(「バイオ炭」のページを参照)。
家畜の放牧方法を改善します。
- 牧場主にとって、再生の目標は、在来草食動物の行動を家畜で模倣することです。これは土壌の生物学的健康をサポートし、水循環を改善し、土壌の侵食を減らし、放牧地の土壌に貯蔵できる炭素の量を増やすことができます。
- 短期間の輪番放牧によって、家畜の影響のタイミング・強度・頻度をずらす
- 総合的な計画放牧
- 群れ放牧・適応型高密度放牧など
再生食品を消費者に直接販売するか、卸売業者や小売業者を通じて販売します。
- オンライン販売、ファーマーズマーケット、協同組合、その他を通じて消費者に直接販売することも現実的な選択肢です。
- 有機種子の販売(GFPジャパン):種子からオーガニックを選ぶことができます。
- フウシカオーガニック:気候変動対策として有機農業に取り組むファーム。購入が気候変動対策にもつながります。
環境再生型農業で生産された食品やその他の製品をサプライチェーンに取り入れます。
環境再生型農業への投資は、企業の温室効果ガス排出量を削減する効果的な方法であり、ビジネスにも有益です。
日本企業の取り組み
- サントリーホールディングス:「ほぼ全ての商品は自然の恵みからできている」という理念のもと、リジェネラティブ農業をサプライチェーン脱炭素化の柱に据える。大麦(英国)・コーヒー豆(ブラジル・コロンビア)・トウモロコシ(米国ケンタッキー州)・サツマイモ(鹿児島・東京農工大と共同)など主要原料の産地で実証プログラムを展開中。2050年バリューチェーン全体GHGゼロを目標。
- ユートピアアグリカルチャー(北海道):放牧酪農を核に、平飼い鶏・山間地放牧など多様な手法で環境再生型畜産を実践。北海道大学と共同で「放牧酪農によるCO₂マイナスの実証」研究を推進。日本国内でリジェネラティブ農業に取り組む先駆的企業のひとつ。
- パタゴニア日本支社:「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という理念を掲げ、世界で初めてリジェネラティブ・オーガニック認証を食品部門で取得した製品を販売。2017年に他社ブランドと協力し「リジェネラティブ・オーガニック認証」を制定し、農業とアパレル双方の変革を推進。
自治体の取り組み
- 山梨県:4パーミルイニシアチブ:日本の自治体として初めて4パーミルイニシアチブに参加(2020年)。果樹栽培でのバイオ炭活用や、認証制度・首都圏でのフェア開催など認知拡大に取り組む。
グローバル企業の取り組み(参考)
- ドクターブロナー(米国):パーソナルケア製品を製造し、環境再生型農業のサプライチェーン開発のリーダー。
- ネスレ:2030年までに主要原材料の50%を環境再生型農業で調達する目標を掲げ、農業従事者への技術支援・資金支援を展開。
環境再生型農業の実践を支援する炭素市場の発展を手助けします。
- 温室効果ガスの排出を削減するための炭素クレジットの取引は、2015年のパリ協定に組み込まれました。企業は、市場の育成に直接関与するか、土壌炭素を収益化する際の課題と機会に取り組む方法を検討できます。ただし、グリーンウォッシュにならないよう注意が必要です。
政治・法律 Governance
環境再生型農業を支援する健全な土壌づくりの取り組みやその他の法律を可決します。
2015年のパリ気候サミットを受けて、フランス政府は「4パーミルイニシアチブ」と呼ばれる炭素隔離政策を実施しました。山梨県では日本の自治体として初めてこの取り組みに2020年から参加し、果樹栽培に活用しています。日本では、農林水産省主導でJクレジット制度を設け、中干し期間の延長などカーボンオフセットの推進をしています。
環境再生型農業を支援する政策と目標を採用し、技術的および財政的支援を拡大します。
- 環境再生型農業を推進するための補助金・助成金を提供し、農家が持続可能な農業に転換しやすい環境を整える
- 環境再生型農業に関する研究を支援するための資金を提供し、新しい技術や手法の開発を促進する
- 効果的な再生型農業技術を広めるための情報共有プラットフォームを構築し、農家同士の交流を促進する
- 化学肥料や農薬の使用を制限する規制を強化し、有機農業や環境再生型農業を促進する政策を導入する
※ このページはグローバル版NexusのRegenerative Agricultureを下敷きにしています。

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